養蜂園の整備

良質なプロポリスの原隗(原料)を生産するためには、起源植物となるアレクリン(栄養の少ない荒地でも育つ強い生命力をもつ)が豊富に自生していることが重要です。原隗の買い付けの通訳をしていた経験と知識を活かし、ミナスジェライス州の理想的な原野を、2003年に養蜂園として購入しました。その軌跡をたどって見ましょう!  

これは現在、砂利をひいて車道にした所の写真です。自生のアレクリン以外は花も木もあまりありませんでした。  

古くてぼろぼろの柵を外し、新しい丸太を立てて柵作りを行いました。鉄線をきつく巻きつけて通しては次の丸太につなぐ、気の遠くなるような作業を繰り返して敷地を全部囲い直したわけです。暑い日差しの照りつく中で作業をしてくれた従業員に感謝! 
 

山火事対策として、隣のFazenda(農家)との柵の間を1.5m間隔で草を掃いました。見回りにも便利な歩きやすい道としても使えるようになりました。

養蜂園の顔となる看板。サンパウロのフェイラ(市場)で彫刻作品を出品していたDedeさんに、養蜂園の看板を作ってもらいました。葉っぱにFazenda Koshin(当時の会社の名前を冠した名前)、日本で販売する*エルザプロポリスのロゴを入れて完成!
*エルザ(社長のポルトガル語の名前) 
 

出来上がった看板は丈夫な丸太を三本使い、苦労して取り付けました。開閉式の扉を取り付け鍵をかけ、やっと門が完成しました。


水も電気もガスもない養蜂園の山。最初の頃は、養蜂植物の花を植えるために町に借りている家から大きなタンクに水を入れて毎日運んでいました。今考えてみると気の遠くなるような作業でした。。。

 

大事な水:5000リットル入る貯水タンクです。植物に水をやるためならこのまま地べたに設置でもかまいませんが、作業小屋でも水が使えるようにするため、5Mの高さの台を作って設置することになりました。  

柱を立てる土台を作り始めましたが、大きな建設道具を売る店もない小さな町での建設は、限られた素朴な道具しかないため、ほぼ全て手作業なので大変です。徐々に徐々にコンクリートで柱を作っていきます。   

コンクリートで柱を作った上に、タンクを置く床にあたる部分を板で成型してコンクリートを流し固めました。何とか無事にタンクを載せ、タンク下の作業スペースを作り、プロジェクト完成です! 現在は2週間に一度ぐらいの割合で町の水道局が水を運んできて、タンクに注水してくれます。

 

*水はとても貴重ですし、養蜂園の自然を守るためにも作業小屋での手洗い・洗濯・シャワーは水を節約し、無添加のせっけんのみです。

大穴治水対策:

養蜂園の土地には侵食された何も生えていない斜面が多く、低い土地に降りていく途中、巨大な大穴(幅50m以上)があります。ブラジルでは道路に穴が開くぐらい強い土砂降りが珍しくなく、このような大雨の時に土が削られ浸食するのです。


そこで、侵食地に大量の水を流し込む原因となっている荒地一帯の整備を進めることにしました。勾配がきつく、水が真っ直ぐ流れ落ちてしまうので、トラクターで土を盛上げて段を作り、一時的に水をため、溝を作って水を誘導し、徐々に下に流すようにしました。

治水&ユーカリの植林:

養蜂園の土地は、環境が厳しい場所で自生するアレクリンが豊富だったため購入しました。つまり、環境が厳しい=乾燥し大変やせた土地です。養蜂園の随所に見られる大穴や地すべり防止のため、2004年から赤土がむき出しで何も生えていない所に毎年1000~3000本程度ユーカリを植林しています。こうすることで徐々に水分保持力の高い豊かな農場となり、花や草木も増えるようになるでしょう。

車で1時間半ぐらいの町から苗を3000本購入し運搬しました。物を大事にするブラジルですから、苗を入れているプラスティック容器は繰り返し使うため、苗屋さんに返すべく、再び往復3時間ドライブ:)

 

ブラジルはまだまだのどかです。資金も一度にはたくさん投入できないので、作業はこんなふうに原始的な手作業だったりします。苗は半数以上が枯れてしまったため、結局2004年は1200本ほどの植林となりました。 

2005年12月に3920本植えたユーカリの苗。シトロネラという種類で、レモンのような柑橘系のさわやかな芳香を持つユーカリです。

 

臨時のアルバイトとして地元の青年5人に手伝ってもらい、10人がかりで二日間、残りは作業の合間に少しずつ植林しました。
作業が終わった時は、さすがの若者たちも炎天下での腰をかがめた長時間の作業に根をあげていました。そういえば、休憩の時に出した甘いおやつが飛ぶように売れていたっけ・・・。

2006年暮れ、昨年と同じように車で1時間半の町から苗を3600本購入し、植林しました。
*ユーカリは成長が早く、材木や様々な工業製品の材料(リヨセルという繊維が有名)として大変注目されているため、ブラジル政府が補助金をだして植林を奨励している樹木です。根を地下深く伸ばし地下水を強力引き寄せるため、砂漠化地域の緑化などに使われています。   
 

2007年もユーカリを植えましたが、その前に少しドラマがあります。それは苗を植えたそばから葉っぱを担いで丸裸にしてしまう、ハキリアリとの戦い。ユーカリを植えるためにトラクターで土をおこした場所を狙い撃ちしたかのように、産卵を控えた女王ハキリアリが飛来したのです!土の上を歩いている所を目撃し、これは大変と捕獲作戦に打って出ました。
 150M×250Mぐらいの広い土地に作った畝の間を行ったり来たりしながら、大きな缶に一杯捕まえて、従業員の飼っている鶏のえさにしてしまいました。成仏してくださいますように・・。

雨の翌日に、大きな羽音をたてて何処からともなく飛んでくる*ハキリアリの女王蟻。その大きさ約3-4cm(でかい!)。地上に降り立つと自分で羽をもいでしまいます。そしてせっせと自分がもぐれるだけの狭い縦長の深い穴(20-30cmぐらい)を掘り、卵の詰まった大きなお尻を切り離してその穴の奥に埋めて出てきて穴を塞ぎます。女王蟻たちは甘いフェロモンの香りがしたなあ~。
*ハキリアリ(サウーバ:葉を巣穴に運びカビを栽培し食物としている蟻)

 

右下の写真:ハキリアリとの戦いにも負けずに無事に成長し、8mを越したユーカリの木。作業小屋の周りは草木が茂り、すっかり景色が変わりました。

2006年頃の作業小屋の景色。 木々も緑も少なく殺風景でした。
2006年頃の作業小屋の景色。 木々も緑も少なく殺風景でした。
2007年に植樹したユーカリの2010年4月の様子。
2007年に植樹したユーカリの2010年4月の様子。

*アレクリンとユーカリとの関係*

現在最高品質とされるグリーンプロポリスの起源植物とさいわれるアレクリン。仮にユーカリを植林することで土地の水分が減ったとしても、わずかな水分で自生する生命力の強い木なので、充分存続が可能です。

*ユーカリは花粉やミツが豊富なため、ミツバチのえさを供給する養蜂植物となります。食料が満ち足りることで、ミツバチの巣は更に強く丈夫になり、結果的にプロポリスの生産量をあげることが出来ます。